<地域医療を志す皆さんへ>
◇◆横浜・寿町ドヤ街を知っていますか◆◇
横浜には寿町と呼ばれるドヤ街があります。300メートル四方ぐらいの狭い地域に、いわゆる「ドヤ(簡易宿泊所)」が120軒ほど営業しています。人口は近年、約6,500人前後で推移しています。寿町は、大阪の釜ヶ崎、東京の山谷と合わせて日本三大ドヤ街と称されます。簡易宿泊所は旅館の一種ですから、敷金礼金や連帯保証人は要らず、宿泊は原則として1泊単位です。寿町のドヤ設備の特徴は、3畳間の個室が多く(約7割)、炊事場・トイレは共同となっていることです。またお風呂はないので、コインシャワーや銭湯を利用することになります。宿泊料は、1泊2,000円前後です。
寿町は、日本の高度経済成長が始まる頃、連合軍による接収が解除された後、荒涼とした土地に、日雇労働者とその家族のための安宿街として、民間人の手によって短期間に作り上げられました。住民は、港湾、土木建築分野の日雇労働の担い手として、日本の近代化や都市の発展を支え続けてきました。1950-60年代の寿町の住民は、家族世帯が比較的多く、子供が1,000人ほど暮らしていました。それから50年が経ち、住民の100%近くが男性の単身者となっています。
1992年頃から続く大不況は、寿町を一変させました。日雇労働求人は激減し、日雇労働を続けドヤに暮らすことのできる人たちはごく一部になってしまいました。ドヤ代を払えなくなった日雇労働者は野宿を余儀なくされ、ダンボールハウスや仮小屋を作って暮らしたり、シェルターに入所しました。その代わり、寿町ドヤで暮らす人は、病気、障害、高齢を理由として働けなくなった生活保護世帯が増えました(住民の約7割)。またサラリーマンだった人が失業や病気のために一般地域の住宅に住めなくなり、ドヤ街に来ざるを得なくなった人も増えています。
◇◆私たちは寿町で地域医療を行っています◆◇
当診療所は「寿町の住人に必要な医療サービスを提供する」という趣旨への賛同者から寄付を募り、1996年4月に開設されました。
寿町の人々にとって、一般の医療機関がかなり掛かりにくく(違和感を持って迎えられる等)、またそのためもあって、治療の中断が多く、一般地域の人々 に比べて、かなり若年で死を迎えてしまう人々が多いという状況が長くありました。診療所開設にあたっては、「何とか医療をもっと身近な、隣の家に行くように気軽に掛かれるものにしていきたい」との切実な願いがありました。そこで、以前から寿町にて活動していたボランティアグループで知り合っていた仲間や医療・福祉関係の友人と協力し、1995年11月に設立準備会を発足させ、「ことぶき共同診療所設立趣意書」を作り、6つの基本方針を決めました。そこには「時間的、場所的、応対的に、患者さんが来やすい診療所にしていくこと。いわゆる敷居の低いこと」が診療所の基本的な理念とされました。そして、翌1996年4月の開設となりました。
診療科目は、当初は精神科・内科だけでしたが、その後、診療科目に整形外科、心療内科、鍼灸が加わり、火から土曜までの週5日となり、徐々に診療体制が充実し、全般的なプライマリーケアを行っています。
また、地域作業所での無料健診、デイケア、造形、書道、静岡での自然とのふれあい、公園園芸、寿町関係資料室などの諸活動も広がりを見せています。
寿町は近年、高齢化(60歳以上が住民の半数を超える)が急速に進み、介護と医療との緊密な連携が求められています。また、単身でのドヤ生活による孤独の問題に対しても、医療の側がいかに対応するべきかが課題として浮かび上がっています。
◇◆見学に来ませんか◆◇
当所では、地域医療に関心がある方の見学を歓迎いたします。これまで、学生時代に寿町で医療相談活動や野宿者訪問活動をし、医師・看護師となり当所の職員となった者も多く働いています。これまでにも医学部生や看護学生、その他にもたくさんの方が見学や実習に来ています。
なお、見学の際には寿町の案内や歴史・現状についての説明もいたしますが、日程が決まりましたら、なるべく事前に連絡をいただけると幸いです。お待ちしております。
□■□お問い合わせ□■□
医療法人 ことぶき共同診療所 担当:鈴木 伸(医師)
〒231-0025
電話・FAX:045-651-2305 E-mail:info@kyoudouclinic.com